お鼻だって、洗ってほしい?
よしかた産婦人科の井畑です。
数年来の副鼻腔炎が悪化し、かかりつけの耳鼻科の先生に手術を勧められていたのですが、とうとう寝るのにも支障が出てきたため諦めて先日手術を受けました。具体的なことは割愛しますが、術後経過は順調で快適な毎日を送れるようになりました。
で、術後のフォローとして耳鼻科の先生に勧められたのが「鼻洗浄」です。ネットで鼻洗浄について調べると、いくつかの共通する注意点があります。
- すべての人にお勧めできるわけではない。
洗浄の仕方にもよりますが、中耳炎の原因になることや副鼻腔炎を悪化させる可能性があります。すでに副鼻腔炎と診断されている方は、かかりつけの医者に鼻洗浄をやってもいいか、よく確認してください。 - 「生理食塩水」を使う。
生理食塩水については後ほど説明しますが、作る時に「沸騰させた水を使わなければいけない」という点は注意が必要です。
この沸騰がなぜ必要かというと、「アメーバ」が鼻腔から侵入して命に関わる感染がおきてしまう可能性がある、というのがよく紹介されていて、とても危険であるかのように書かれています。
しかし、日本の水道水においては、アメーバが存在することはまずありえません。(井戸水や湧き水だったら存在する可能性はありますので沸騰させるべきです。)
市販のナチュラルウォーターは原則として滅菌や濾過が義務付けられていますので、信頼の置けるメーカーのものであればそのまま使っても大丈夫そうです。ただ心配であれば沸騰させた方が無難でしょう。 - 温める。
温度差によって痛みを感じることもありますので、ある程度は温めたほうが安全です。 - 水道水は使わないほうがいい?
水道水だと残留塩素やトリハロメタンがあるから使わないほうがいいという意見の方がいます。水道水は一切飲まないという方もいらっしゃいます。
個人的には水道水でも問題ないと思っていますが、このあたりは趣味やこだわりの領域ですのでご自身の良いと思うやりかたでやるのがいいと思います。
<鼻洗浄に必要なもの>
専用の器具を使わないのであれば、コップに生理食塩水を入れて、片方の鼻から「すする」というのが一般的です。たぶん慣れれば簡単にできるのだと思いますがやや難易度が高そうに思えますし、いろんなものを買ってみようというこの稿の趣旨にも反します。
鼻洗浄の器具はたくさんが出ていますが、手で握って水を出す「洗瓶」タイプのものが安くて主流のようです。いくつかのメーカーが、水に溶かして洗浄液を作る薬剤や洗浄液そのものと一緒に販売しています。
鼻洗浄ボトル アレルギー性鼻炎 慢性鼻炎 鼻うがい 鼻すっきり ノーズシャワー [並行輸入品]
手動以外にもポンプ式や電動式がありますが、総じて高価です。
電動式にはミスト状にして鼻をあらうタイプもあります。パナソニックやオムロンが出していますが、子供だとこれしか選択肢がないかもしれません。
ただ、市販されているものは「スチーム式」といって過熱してスチームを出していますので水しか使えません。生理食塩水は使えないのです。あくまで加湿器の親玉、という位置づけです。ただ、スチームだと痛くないので、むしろ水だけで使えるというのは良い点かもしれませんね。実はこれ、子供用として購入検討中です。
パナソニック 吸入器 3wayスチームタイプ 白 EW6400P-W
A&Dという会社の「ホットシャワー」は「超音波式」といって振動でスチームをつくっているため生理食塩水が使えます。
オムロンのものは医療用であれば生理食塩水が使えますが、原則として医療従事者経由でしか買えないようです。
ヨガの世界で鼻を洗うのは一般的らしく、「ネティポット」というインド版急須が売られています。これ、かなり興味があるのですが難易度も高そうですので今後の課題にしたいと思います。
サイナスリンス(Sinus Rinse) ネティポット 20包 NTP-20 [並行輸入品]
オムロンのものは医療用であれば生理食塩水が使えますが、原則として医療従事者経由でしか買えないようです。
<生理食塩水について>
鼻に水が入った時の痛みの原因は「浸透圧」によるもので、人の体の浸透圧に近い液体なら痛くありません。「風邪をひいて鼻水が出ると痛くてしょうがない」なんて聞いたことありませんね。
生理食塩水とは、0.9%の食塩水のことです。人間の体液とほぼ同じ浸透圧になる食塩水がだいたい0.9%ということですけど、それほど厳密なものではありません。
当然人によって違うでしょうし、体調などでも変わるでしょうから、厳密に0.9%にこだわる必要はありません。
例えば500mlのペットボトルがあれば、500×0.9/100=4.5 つまり4.5gの食塩をいれればだいたい0.9%になります。
実は、ペットボトルのフタに塩を少なめに入れると、だいたい5gになります。ペットボトルのフタには規格がないので飲料の種類によって様々ですが、多少濃度が変わっても鼻洗浄程度なら問題ありません。おおらかな気持ちでフタ8分目くらいの塩をおおむね500mlの水に混ぜればできあがりです。
しかし私のようにものぐさになりますと、水場に塩をおいておくとすぐ湿気てしまいそうですし、いちいち台所に行くのも面倒、スプーンを使ったら洗い物が増えるし、キャップに塩をいれて混ぜるときにこぼしてしまいそうです。そこで市販のものはないかと色々調べて見ました。
サーレS(ハナクリーンS用洗浄剤)
東京鼻科学研究所というところが出している、ハナクリーンという鼻洗浄器に使うものです。150mlの水に一包溶かせば生理食塩水ができるというもので、食塩以外にペパーミントとメントールが入っています。Amazon価格で50袋857円ですから一回あたり17円程度かかることになります。
ハナノア
小林製薬のもので、粉ではなく液体で溶かす手間がかかりません。専用器具には普通のタイプとシャワータイプがありますが、上を向く必要のないチューブ付きのシャワータイプの方が使いやすいかもしれません。専用液には食塩以外に香料やグリセリン、乳化剤(界面活性剤)などが含まれております(液体で販売する以上やむを得ないのでしょうが)。値段も500mlで746円(amazon価格)ですので安いとは言えません。
ニールメッド サイナスリンスキット
アメリカでは一番売れている鼻洗浄器とのことです。ボトルは240mlで、そこに専用の塩をいれて使います。この専用の塩入りの袋(サッシェというそうです:小さい袋の意)にはpHの調整用に4%の重炭酸ナトリウムが含まれており、生理学的には好感が持てます。問題はこの塩の値段ですが、amazonで120包入りで2740円、1包あたり23円(生理食塩水240ml分)ですので、サーレとほぼ同じかやや安いくらいでしょうか。
ちなみに iHerbで買うと100包入りで1542円とかなり安く買えますが、サプリメント好きの人でないと敷居が高いですね。
<実際のやり方>
Youtubeで探すと山ほどやり方の動画が出ていますが、大事なポイントは
- 洗面台などで頭を水平近くまで屈めてやること
- 噴射のスピードは可能な限りゆっくりとやること。
慣れてきたらスピードアップしたほうが気持ちよいかもしれませんが、最初はとにかくゆっくりが良いようです。ニールメッドでは、「large volume, low pressure(量はたくさん、圧は少なめに)」と教えていますがそれが良いと思います。 - 噴射の方向はやや外向きで小鼻の方向を意識する。
つい鼻の奥に向けてしまいがちですが、圧が強くなりますので、最初は小鼻の内側を洗うくらいの気持ちでやるのが良いようです。 - 洗浄中は、「あーーー」と声を出すと良いらしい。
鼻と耳は耳管という管でつながっていて普段は閉じていますが、あまりに洗浄の圧が高くなると耳へ行くこともあります。声を出していれば圧を軽減でき、誤嚥も防げるとのことですが、正直私はあまりやってません。やった方がいいと思いますが… - 洗浄後は上顎洞あたりにたまった水をしっかり出す。
「副鼻腔 画像」で検索https://goo.gl/pe3tjjすると図がたくさん出てきますが、上顎洞という部分の底は鼻よりも低い位置にあります。ここに水がたまると、頭を逆さまにしなければ水が出ていきません。頭を下にしたり、横にしたり、いろいろ工夫して水を出しましょう。 - 洗浄後に鼻を強くかんではいけない。
これはかなり大事です。鼻をかむと鼻腔の圧力が高まるため耳管経由で中耳炎を起こす危険があります。静かに静かに鼻をかむのが良いようです。
いろいろ見た中で、ニールメッドの宣伝の動画が一番わかりやすかったのでそれを紹介しておきます。
https://youtu.be/Lko-WEvu3L8
これ以外にも鼻洗浄(鼻うがい)についても動画はたくさんあって、人気YouTuberもたいていトライしています。
ためしてガッテンでも特集しており、この動画は参考になりました。お試しの前に見てみるといいかもしれませんね。
最後に、お気付きの方も多いと思いますが、今回のタイトルは天才仲畑貴志の歴史的名コピーのパクリです。
ウォシュレットは一般的になりましたが、果たして鼻洗浄は一般的になるのでしょうか。
2017年7月1日